SSブログ

「どらン猫小鉄」はるき悦巳 [雑記]

「じゃりン子チエ」と言う漫画をご存じでしょうか。大阪を舞台に小学生のチエちゃんを中心にしてどうしようもないダメ父の鉄、しっかり者のお母はん、元ヤクザの親分のお好み焼き屋、カルメラ焼きのコンビ、等々その他色々な登場人物が繰り広げる人情物語です。予備校時代に初めて知って夢中になり当時出ていた10数巻を一気買いして何度も読み直したものです。一時は本気で大阪の大学を受けようかとまで思いました。

そしてこの「どらン猫小鉄」はその「じゃりン子チエ」のスピンオフ作品。重要な登場人物である猫の小鉄を主人公にした物語です。

小鉄はチエちゃんの家で飼われているネコですが人間の年で言うと中年くらい。既に現役を引退していつもノンビリ昼寝ばかりしていますが若い頃は"月輪の雷蔵"と言う名で九州で伝説となる大喧嘩をしたネコ界では有名なネコです。時々若いヤクザ猫が名を上げようと決闘を申し込んできますがいつも軽くあしらわれてしまいます。この「どらン猫小鉄」はその伝説となった"月輪の雷蔵"の九州での大活躍を描いた漫画です。

ストーリーは黒澤明の「用心棒」そのもの…と言うより黒澤明の「用心棒」のリメイクと言って良いでしょう。当時まだ名前もなく野良猫だった若い頃の小鉄がフラッと九州のある街にやってきます。その街は地元のヤクザ猫達と大阪からやって来たヤクザ猫達がダイナマイトを使って勢力争いをやっている殺し合いの絶えない街でした。面白半分に両グループを手玉にとって共倒れにさせようとした小鉄。途中まではうまく進みますが地元親分の息子である"カズヒサ"が街に戻ってきてからは状況は一変します。そうまさに「用心棒」そのものです。そして仲代達也が演じた卯之助に対応するのがこの"カズヒサ"です。卯之助は拳銃を武器にしていますがこの"カズヒサ"はオーストラリアで覚えたブーメランを使います。とにかくこの"カズヒサ"がカッコイイ。

黒澤明の「用心棒」ではラストで三船敏郎と仲代達也の刀対拳銃の対決シーンがあります。このシーンは「七人の侍」のラストの雨中での大乱闘に次ぐ日本映画の名シーンだと思いますが、もちろんこの「どらン猫小鉄」にもラストで小鉄と"カズヒサ"の決闘シーンがあります。知り合いのオヤジにブーメランの複製を作ってもらい練習してその動きを見極められるようになった小鉄…しかし"カズヒサ"はまだ奥の手を残していた。さぁどうする小鉄。ブーメランと言う飛び道具に対して素手で闘う小鉄。いや〜「用心棒」にも負けない名シーンです。そして漫画の表紙を見ると分かる人には分かると思いますがこの時はまだ小鉄のトレードマークの額の三日月の傷がありません。"月輪の雷蔵"も"額の三日月の傷"の由来もこの漫画で描かれています。ラストで"カズヒサ"が小鉄に語りかけるセリフはマジで泣けます。

最近テレビで「天国と地獄」のリメイクがされたり織田裕二主演で「椿三十郎」がリメイクされたりと黒澤明が再び取り上げられておりYou Tubeで「七人の侍」や「用心棒」の映像を見ていたらこの漫画の事を思い出しました。今手元にはありませんが確か実家にはまだあるはず…この正月に帰省した時に持ってこようかな。


nice!(1)  コメント(2)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

nice! 1

コメント 2

びっけ

へーっ! こんな漫画があったのですね!
あの「用心棒」のネコ版漫画・・・すごく興味がわきます。
小鉄の額の傷の謎もわかるようだし・・・。
映画では仲代達也が演じた役のネコも、粋そうだし・・・。
探してみます!
by びっけ (2007-12-08 21:07) 

コトロ

>びっけさん
niceとコメントありがとうございます。面白かったですよこの漫画。「じゃりン子チエ」はほのぼの漫画でしたがこの漫画はかなりハードです。一応メインのストーリーは「用心棒」なのですが細かなディテールはかなり変えており「用心棒」と見比べてみるのも面白いです。
「用心棒」の仲代達也もそうでしたが、この漫画に出てくる猫たちがとにかくデタラメで(ヤクザの親分は西鉄ライオンズの熱狂的なファンでヘルメットに似せるために自分で耳を切り落として額に"NL"の烙印を押しているほどです)その中で唯一この"カズヒサ"(名前は西鉄ライオンズの稲生和久から)だけが切れ者で凄くカッコイイです。
仲代達也は最後まで悪役として死んでいきましたが"カズヒサ"はそれとはひと味違ったラストシーンを演じてくれてます。お薦めです…が見つかるかなぁ?
by コトロ (2007-12-11 22:56) 

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0